計算のつまずきは練習不足じゃない|ドリルを繰り返しても速くならない理由

計算のつまずきは練習不足ではないことを解説するイラスト

「毎日ドリルをやっているのに、速くならない…」
「何度言っても、同じところで間違える…」
計算のことで、そんなお悩みはありませんか?

ともさん
ともさん

私は高校で数学を教えてきました。また、学習教室の指導者として幼児から中学生までのお子さまを見てきたほか、放課後等デイサービスでは児童発達支援管理責任者として、特性のあるお子さまの支援にも携わっています。そのなかで感じているのは、高校でつまずいている生徒の多くが、小学校のどこかで止まったままだということです。今回は、つまずきの見分け方をお伝えします。

なぜドリルを増やしても速くならないのか

① つまずいている場所が、もっと前にある

3年生の計算でつまずいているように見えて、実際は2年生や1年生の内容で止まっていることがあります。土台がぐらついたまま、その上の階を何度も練習しても、安定しません。

同じところで間違え続けるときは、量ではなく「どこで止まっているか」を見る必要があります。

② 「わかる」と「すらすらできる」は、別のこと

説明すれば理解できる。でも時間がかかる。これは理解の問題ではなく、定着の問題です。

理解できているものを繰り返すのは意味がありますが、理解が不十分なまま繰り返しても、間違ったやり方が定着してしまうことがあります。

③ 「速くやりなさい」で、雑になっている

タイムを計られたり、「早くしなさい」と言われ続けたりすると、確認する余裕がなくなります。その結果、

  • 途中式を書かなくなる
  • 見直しをしなくなる
  • 符号や桁を確認しなくなる

速さを求めた結果、かえって間違いが増える——これはよく起こることです。

④ 計算以外のところで、時間がかかっている

意外に見落とされがちなのが、計算そのもの以外の負担です。

  • 数字を書くのに時間がかかる
  • 問題の数字を読み取るのに時間がかかる
  • ノートのどこに書くか迷う

手が止まっている理由が、計算ではないことがあります。

つまずきの5つのタイプ

お子さまがどれに当てはまるか、見てみてください。複数が重なっていることもあります。

【タイプ1】数のまとまりが見えていない

〈こんな様子〉

  • 8+5 のような繰り上がりに時間がかかる
  • 何度やっても、指を使って一つずつ数える
  • 「あといくつで10になる?」に即答できない

〈背景〉

「10のまとまり」という感覚がまだ育っていません。計算というのは、10をひとかたまりとして扱う作業です。ここがあいまいだと、すべての計算が「一つずつ数える」作業になり、時間がかかります。

〈家庭でできること〉

  • おはじきやブロックなど、目に見えるもので10のまとまりを作る
  • 「あといくつで10?」を、遊びのように繰り返す
  • ドリルより先に、この感覚を育てる

【タイプ2】九九が「思い出す」段階で止まっている

〈こんな様子〉

  • 「7×6は…しちいちがしち、しちにじゅうし…」と最初から唱える
  • 6の段・7の段・8の段で止まる
  • 答えは合っているが、時間がかかる

〈背景〉

九九は「唱える」段階と「即座に出てくる」段階があります。唱えて思い出している間は、その分の力を計算に使えません。筆算になると、この遅れが積み重なります。

〈家庭でできること〉

  • 全部の段をまんべんなくではなく、苦手な段だけを集中的に
  • 順番どおりではなく、ばらばらに出す
  • 1日3分でよいので、毎日短く

【タイプ3】繰り上がり・繰り下がりを覚えていられない

〈こんな様子〉

  • 繰り上がった1を忘れる
  • 筆算の途中で、何をしていたか分からなくなる
  • 口では手順を言えるのに、書くとできない

〈背景〉

頭の中で一時的に情報を保持する力に負担がかかっています。「6+7=13、3を書いて、1を繰り上げて、次は…」——この間ずっと「1」を覚えておく必要があります。ここに負担があると、手順を知っていても抜け落ちます。

〈家庭でできること〉

  • 繰り上がりの1を、必ず小さく書く(覚えておかなくて済むようにする)
  • 途中式を消させない
  • 一度に扱う桁数を減らす

覚えておくのが苦手なら、書いてしまえばいい——これは「甘え」ではなく、立派な工夫です。

【タイプ4】筆算の桁がそろわない

〈こんな様子〉

  • 筆算の位がずれて、答えが合わない
  • 字が大きく、マス目からはみ出す
  • ノートのどこに書けばいいか迷う

〈背景〉

書くこと・見ることの負担が関係している場合があります。計算の理解とは別の問題です。

〈家庭でできること〉

  • マス目のノートを使う(大きめのマスで)
  • 筆算専用の線を引いたプリントを用意する
  • 1行に1問だけ書く

道具を変えるだけで、間違いがぐっと減ることがあります。

【タイプ5】手順は分かるのに、途中で分からなくなる

〈こんな様子〉

  • わり算の筆算で、途中で止まる
  • 「次は何をするんだっけ」と聞いてくる
  • 一つずつ言えばできる

〈背景〉

手順が多い計算では、順番を保持しながら進める必要があります。ここに負担があると、途中で迷子になります。

〈家庭でできること〉

  • 手順を紙に書いて、机に貼る(たてる→かける→ひく→おろす など)
  • 見ながらやってよいことにする
  • 手順を覚えるのは、あとからで構いません

家庭でできること(共通)

① 時間を計るのは、できるようになってから

タイムを計るのは、正確にできるようになった後の段階です。まだ確実でないうちに速さを求めると、雑になり、間違いが増えます。

まず「正確に」、それから「速く」。この順番です。

② 量より、1問をていねいに

20問を雑にやるより、5問をていねいにやる方が力になります。そして、その5問が確実にできてから、量を増やしてください。

③ 間違いを「×」で終わらせない

大切なのは、どこで間違えたかです。

  • 九九を間違えた
  • 繰り上がりを忘れた
  • 桁がずれた
  • 問題を読み間違えた

同じ「×」でも、原因はまったく違います。そして原因が分かれば、手立ても決まります。間違い直しのとき、「どこで間違えたと思う?」と一緒に見てみてください。

④ 指を使うのを、無理に止めない

「指を使うな」と言われることがありますが、指はとても便利な道具です。数の感覚が育っていく途中では、指を使うことに意味があります。

無理にやめさせるより、10のまとまりが分かるようになれば、自然と使わなくなります。

⑤ 途中式を消させない

答えだけ残して途中を消してしまうと、どこで間違えたか分からなくなります。途中式は、間違いを見つけるための大切な手がかりです。「ノートが汚れるから」と消してしまうのは、もったいないことです。

保護者の方に、お伝えしたいこと

学年を戻ることは、恥ずかしいことではありません

3年生のお子さまが1年生の内容に戻る——これは後退ではなく、いちばんの近道です。学習指導の現場では、その子がすらすらできるところまで戻って始めるのが基本です。遠回りに見えて、これがいちばん確実な方法です。

土台が固まれば、そこから先は驚くほど速く進みます。「学年相応のことをやらせなければ」という気持ちは、いったん脇に置いてみてください。

「何回言ったらわかるの」は、逆効果です

これを言われると、お子さまは「自分は算数ができない」と思い込みます。一度そう思い込むと、計算を見るだけで手が止まるようになります。

つまずいているのは能力ではなく、どこか一か所です。そこを見つければ、必ず進みます。

計算が苦手=算数が苦手、ではありません

計算に時間がかかるお子さまでも、図形が得意だったり、考え方が優れていたりすることはよくあります。計算はあくまで道具の一つです。それだけで算数の力を判断しないでください。

最後に

計算が遅い、間違いが多い——それは、練習が足りないからではないことが多くあります。つまずいている場所が、どこかにあるのです。

  • 数のまとまりが見えていない
  • 九九が出てこない
  • 繰り上がりを覚えていられない
  • 桁をそろえて書けない
  • 手順の途中で迷う

原因がちがえば、手立てもちがいます。ドリルの量を増やす前に、まず「どこで止まっているのか」を一緒に見てみてください。そこが見つかれば、あとは進みます。

高校の教室でも、学習教室でも、放課後等デイサービスでも——つまずきの場所さえ見つかれば、お子さまは自分の力で進んでいきました。年齢や学年は関係ありません。大切なのは、止まっている場所を見つけることです🍀

ともさん
ともさん

「うちの子は、どのタイプだろう」——そんな時は、お気軽にご相談ください。お子さまの様子をうかがいながら、一緒に考えます🍀

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参考サイト


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現在、長野市で学習支援に力を入れた放課後等デイサービスの開設準備を進めています。

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