「原稿用紙の前で、1時間止まったまま…」
「『面白かった』から先が出てこない…」
読書感想文で、そんな様子はありませんか?

教員をしていた頃、行事や活動の感想文には数多く目を通してきました。そこで感じていたのは、書けないお子さまは「書く力がない」のではなく、「何を書けばいいか分からない」だけだということです。やることが多くて複雑な課題は、手順に分けて一つずつ進めることで、ぐんと取り組みやすくなります。今回は、その手順を具体的にお伝えします。
なぜ読書感想文は書けないのか?
① 「感想を書きなさい」が、あいまいすぎる
大人でも、「この本の感想を800字で書いてください」と言われたら困ると思います。
- どんなことを書けばいいのか
- どこまで詳しく書くのか
- 何を求められているのか
指示があいまいなまま、原稿用紙だけが渡される。これが最初の壁です。
② 4つのことを、同時にやろうとしている
読書感想文は、実は複数の作業のかたまりです。
- 〈1〉本を読む
- 〈2〉自分の気持ちに気づく
- 〈3〉書く順番を組み立てる
- 〈4〉文章にして原稿用紙に書く
このうちどれか一つでも苦手があると、全体が止まります。そして多くの場合、止まっているのは〈4〉ではなく〈2〉や〈3〉です。書く力ではなく、その前の段階でつまずいています。
③ 「面白かった」の先が出てこない
「他に何かないの?」と聞かれても、言葉が出てこないことがあります。これは、語彙が少ないからではありません。問いかけられていないからです。
「どこが面白かった?」「そのときどう思った?」と具体的に聞かれれば、言葉は出てきます。ぼんやりした問いには、ぼんやりした答えしか返せません。
④ 「正解がある」と思っている
「先生が喜ぶことを書かないといけない」「いいことを書かないと怒られる」——そう思っていると、自分の本当の気持ちが書けなくなります。
「つまらなかった」「主人公に共感できなかった」——本当はそれも立派な感想なのですが、書いてはいけないと思い込んでいるお子さまは少なくありません。
書き始めるまでの手順
① 本選びから、一緒にやる
読書感想文は「読書」の宿題ではなく、「作文」の宿題です。ですから、本選びで無理をする必要はまったくありません。
- 薄い本でいい
- 好きなジャンルでいい
- 絵の多い本でもいい
- 一度読んだことのある本でもいい
厚い本・立派な本を選んで、読み終わらないまま8月末——これがいちばん避けたい形です。読み終わらなければ、感想文は一行も書けません。
② 読みながら、付箋を貼る
読み始める前に、付箋を渡してください。そして、「心が動いたところに貼ってね」と伝えます。
- びっくりしたところ
- 悲しかったところ
- 「自分だったら嫌だな」と思ったところ
- よく分からなかったところ
「よく分からなかった」でも構いません。それも立派な反応です。読み終わったときに付箋が3枚あれば、書く材料は十分にそろっています。
③ いきなり書かせない。まず、話を聞く
これがいちばん大切な手順です。原稿用紙を出す前に、付箋のところを開いて、話を聞いてください。
「ここ、どうして貼ったの?」
「そのとき、どう思った?」
口で言えたことは、書けます。逆に、口でも言えないことは、書けません。話す段階を飛ばして原稿用紙に向かわせるから、止まってしまうのです。
④ 話したことを、メモにする
お子さまが話したことを、短い言葉でメモにします。このメモは、お子さまが書いても、保護者の方が書き取っても構いません。
大切なのは、頭の中にあるものを、外に出して見える形にすることです。メモが5つか6つあれば、原稿用紙は埋まります。
⑤ メモを並べ替えてから、清書する
メモができたら、順番を決めます。型を使って構いません。むしろ型があった方が書きやすくなります。
| 構成 | 書く内容 |
|---|---|
| 【はじめ】 | なぜこの本を選んだのか(「表紙が気になったから」でも立派な理由です) |
| 【なか】 | いちばん心に残った場面はどこか/そのとき、どう思ったか/自分だったら、どうしていたか |
| 【おわり】 | 読み終わって、今どう思っているか/これから自分はどうしたいか |
型を使うのは「ずるい」ことではありません。文章の書き方を学ぶというのは、型を身につけることでもあります。
家庭で使える質問リスト
話を引き出すときに、そのまま使っていただける質問です。
場面について
- どの場面がいちばん心に残った?
- どうしてそこが気になったの?
- びっくりしたところはあった?
気持ちについて
- そのとき、どんな気持ちになった?
- 主人公のこと、好きだった? 嫌だった?
- 「わかるなあ」と思ったところはあった?
自分と結びつける
- 自分だったら、どうしていたと思う?
- 似たようなことが自分にもあった?
- 家族や友だちに、この本をすすめたい?
読み終わって
- 読む前と読んだあとで、何か変わった?
- この本を一言でいうと、どんな本?
すべて聞く必要はありません。3つか4つで十分です。反応が良かった質問を、もう少し深く聞いてみてください。
保護者の方に、お伝えしたいこと
「面白かった」から始めていい
「面白かった」しか出てこなくても、それでいいのです。そこから、「どこが?」「なんで?」と一歩ずつ広げていけば、必ず言葉は出てきます。最初から気の利いた感想を求めないでください。
上手に書かせようとしない
これまでたくさんの感想文を読んできましたが、心に残ったのは、うまくまとまった文章ではなく、その子自身の言葉が入っているものでした。
「うまく書けているか」ではなく、「この子の言葉になっているか」を見てあげてください。
書くことそのものがつらい場合は
字を書くこと自体に大きな負担があるお子さまもいます。その場合は、学校に相談してみてください。
- パソコンやタブレットで書いてよいか
- 字数を減らしてもらえるか
- 話したことを大人が書き取る形でよいか
学校によって対応は異なりますが、相談すること自体は特別なことではありません。「考えたことを表現する」という宿題の目的が果たせていれば、手段は一つでなくてよいはずです。
あらすじだけになっても、それは進歩です
「あらすじばかりで、感想が書けていない」そう感じられるかもしれませんが、あらすじを書けたということは、本を読んで内容を理解できたということです。
そこに一行、「わたしは○○だと思いました」が入れば、それは立派な感想文です。
最後に
読書感想文が書けないのは、お子さまの力が足りないからではありません。指示があいまいで、複数の作業が重なった、難しい宿題だからです。
だからこそ、
- 読みやすい本を選ぶ
- 付箋で材料を集める
- 書く前に、まず話す
- 話したことをメモにする
- 型に沿って並べ替える
この手順を踏めば、原稿用紙の前で固まる時間は、ずいぶん短くなります。
そして何より、お子さまが本を読んで何かを感じたのなら、それを言葉にする手伝いをするのは、大人がしていい仕事だと思っています🍀

「うちの子の場合、どう声をかけたらいいだろう」——そんな時は、お気軽にご相談ください。お子さまの様子をうかがいながら、一緒に考えます🍀
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参考サイト
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